(Nikolaus Mach-Hour /グローバル戦略担当VP)
日本企業をいかにグローバルに変革していくかというテーマは、私にとって何十年にもわたって興味深いテーマでした。
2026年はJCOの20周年にあたります。この節目を機に、私たちのお客様企業が現在、グローバル変革においてどの段階にいるのかを振り返り、現状を確認してみたいと思います。
私は以前から、「典型的な日本企業文化」はもはや存在しないと強調してきました。JCOは日本の大手企業だけでなく、数百社に及ぶ中小企業も支援してきましたが、その経験から、企業のグローバル変革の段階には、大きく次の3つのタイプがあることが分かりました。
タイプ1:日本本社中心型/強いサイロ化傾向
日本本社と海外子会社の業務が分断されているケースが多く、CHRO(最高人事責任者)の役割や、グローバルな人事基盤が整備されていないことが一般的です。
タイプ2:日本本社主導型/部分的に連携
日本本社がグローバルな取り組みを統括し、各地域の拠点がそれを支援する形です。各地域で先行して行われた取り組みをもとに、海外子会社が一部の変革施策を主導する場合もあり、日本本社に外国人の経営幹部がいるケースも多く見られます。
タイプ3:グローバル・マトリクス型/日本は地域拠点
グローバル本社が日本国外に置かれ、日本法人は地域拠点の一つとして位置づけられています。その結果、重要なグローバル規模のプロジェクトにおいて、日本人社員の存在感や戦略的な影響力が低下することがあります。
それぞれのタイプが固有の課題を抱えているとはいえ、グローバル変革という観点では、タイプ2がいわゆる「ゴルディロックスゾーン(ちょうど良い状態)」ではないかと思います。つまり、時代に取り残されるほど保守的でもなく、かといって、日本企業としてのルーツを失うほどグローバル化しすぎてもいないという状態です。
そこで今回は、タイプ2に焦点を当て、高い水準で変革が進んでいるように見える企業においても、どのような見えにくい課題が残っているのかを見ていきたいと思います。また、変革を進めたことで、予想外の新たな問題が生じていないかについても検討します。
以下の分析が、皆さまご自身の組織がどの程度変革を遂げているのかを見極める上で、少しでも参考になれば幸いです。
(今後の記事では、さらに多くの事例をご紹介する予定です。)
変革のトレンド:日本本社における外国人の専門家・経営幹部の登用
タイプ2に該当する多くの日本企業では、外国人の専門人材や経営幹部が日本本社で直接働いています。その多くは、海外子会社から出向している、あるいは日本と海外を定期的に行き来しています。
このトレンドの利点
外国人の人材が重要なポジション(CHRO、CFO、CIO、CMOなど)を担うことで、日本本社の経営陣だけでなく、彼らが日常的に関わる各部門にも、重要なグローバル視点をもたらすことができます。
外国人の経営幹部が明確なビジョンを持つだけでなく、日本本社の組織階層を理解し、その中で物事を進める方法を理解していれば、行動のスピードを高め、より広い範囲にわたって変革を管理することが可能になります。
依然として残る見えにくい課題
一方で、外国人経営幹部を日本本社に配置・赴任させ、簡単な日本語研修を提供するだけでは十分とは言えません。ここでは、擦り合わせる必要のある3つの視点について説明したいと思います。
A.外国人側の視点
まず、外国人の専門家や経営幹部自身が、日本側の現在の「変革への準備度」を十分に理解する必要があります。
私はこれまで、「最初の100日で多くの変革を成し遂げよう」というリーダーシップ・アプローチを実践しようとして、壁にぶつかる外国人社員を数多く見てきました。
さらに、「グローバル責任者 / ディレクター」といった役職名についても、双方で認識が異なることが少なくありません。日本人社員が「当社でいう『グローバル』とは世界全体を意味します。そしてここに日本は含まれません。」と説明しなければならないケースが、予想以上に多いのです。
要するに、新たに日本本社に赴任した外国人社員は、まず「この組織ではどのようなルールで物事が動いているのか」を学ぶ必要があります。その上で初めて、そのルールをうまく応用し、場合によっては変えていくことができるのです。
B.外国人社員と直接関わる日本人チームの視点
2つ目の視点は、1つ目の視点と密接に関係しており、外国人の専門家や経営幹部が日本本社に赴任した後、直接関わる日本人チームや部署がいかに効率よく協働できるかという点です。
日本人チームは、日本企業の海外子会社での勤務経験がある外国人同僚であれば、日本本社にも自然に溶け込めるだろうと考えがちです。
しかし、日本本社と海外子会社では仕事の進め方が多くの点で異なるため、新たに赴任する外国人社員だけでなく一緒に働く日本人社員に対しても、コミュニケーションや異文化理解に関する研修を提供することが極めて重要になります。
私はこれまで、「物事をどのように進めるか」に関する価値観や認識の違いが、中期的に深刻な問題へ発展するケースを何度も目にしてきました。
たとえば、「事業上のリスクや機会を、どのように責任を持って評価するか」や、「アジリティをどう定義するか」という認識が違うことがあります。
一方で、外国人経営幹部による個人経費の扱いなど、もっと細かな点が問題になる場合もあります。
C.日本本社全体としての視点
もちろん、外国人の専門家や経営幹部を受け入れる、日本本社の組織全体にも目を向ける必要があります。
外国人社員を社内外に大々的に紹介するだけでは、彼らを組織内の公式・非公式のネットワークに本当の意味で溶け込ませることにはなりません。
たとえば、事業部門の幹部50人が参加するような重要な会議で、参加者のうち5人が日本語を話せないにもかかわらず、プレゼンテーション、資料、議論のすべてが日本語のみで行われ、通訳も用意されていないという話をよく耳にします。さらに極端なケースでは、日本語で行われる非公式のトップレベルの会議から、外国人の経営幹部が除外されていたこともあります。
顧客対応の面でも、本社で行われる顧客向けプレゼンテーションや展示会などが、英語の資料を一切用意せず、すべて日本語だけで運営される場合があります。
その結果、日本本社で働く外国人は、オンボーディング期間を終えた後も、組織内の重要な情報や意思決定の流れに完全には加われていないと感じる場合があります。
全体像
現在、あなたがグローバル変革を進めている日本企業(今ではほぼすべての企業がそうだと思いますが)に所属しているのであれば、ぜひ上記3つの視点それぞれについて、課題や見落とされている点がないかを確認してみることをおすすめします。
もし、多大な労力と投資を投じて、外国人の専門家や経営幹部を本社に配置しているにもかかわらず、「日本ではほとんどのことが従来どおりに行われている」のであれば、この戦略から十分な成果を得られないことは明らかです。日本側の組織も、時間をかけて意識的に変わっていかなければならないという点は、いくら強調してもしすぎることはありません。
本シリーズの第2回では、さらに別の事例を取り上げます。例えば、なぜ本社と地域拠点の間で進めるプロジェクトが長期化するのか、なぜ地域主導の取り組みが途中で停滞してしまうのかといった点について、掘り下げていきます。
真の意味での組織への統合を可能にするには、単なる善意だけでは十分ではありません。そのためJCOでは、個別コーチングから複数の階層を対象とした包括的なプログラムまで、こうした課題に対応するためのさまざまなプログラムをご用意しています。